
最近聞くオルタナティブ教育っていったい何?



うちの子が公立の学校でなじめるか心配



オルタナティブ教育の学校に興味があるけど、実際通わせるのはちょっと不安



私も子供をオルタナティブ教育の学校に入れるまで不安だらけでした……
「藤井聡太棋士はモンテッソーリ教育の幼稚園に通っていた」とか、「俳優の坂東龍汰さんはシュタイナー教育で育った」とか聞いたことはありませんか。最近はオルタナティブ教育について耳にする機会が増えました。
しかし、自分たちが小さいころ経験した教育ではないため正直よくわからず、通わせてみたいと思っても不安がありませんか。
私はもともと教師をしていましたが、教育関係者でもオルタナティブ教育について知っている人より知らない人のほうが多いのが現状です。
私はシュタイナー教育に出会い、教育内容に感銘を受け、自分の子供をシュタイナー教育の学校に通わせることに決めました。
この記事では、自分の子をオルタナティブ教育の学校に入れた元教師の私が、オルタナティブ教育の特徴と種類やメリットデメリットまでを解説します。
- オルタナティブ教育とは
- オルタナティブ教育の種類
- わが子に合ったオルタナティブ教育の選び方
- オルタナティブ教育のメリット・デメリット


ほしのこ
学生時代は学業の傍ら、ホテルの結婚式場でアルバイトをしていました。大学を卒業後、私立中高一貫校にて10年間、数学教師として勤務。担任や部活顧問を経験し、多くの卒業生を見送りました。
現在は3人の育児をしながらWebライターをしています。教育に関心が高く、子供はシュタイナー教育の学校に通っています。
趣味:メダカのお世話、バレーボール、時短家事、健康的なものを食べること
オルタナティブ教育とは


オルタナティブ教育とは、文部科学省が定めた学校外での教育のことです。主流な教育に代わる新しい教育で、独自の理念や教育方針をもって運営されています。
もともとオルタナティブ教育の理念は、ヨーロッパやアメリカの哲学的思想を背景に発展してきました。子供の多様性を重視し、公立の学校では取り入れにくい活動を行っていることが特徴です。
またオルタナティブ教育を取り入れた学校をオルタナティブスクールと呼びます。近年、「子供たちの個の力を活かし、これからの社会を生きていく力を身につける」ことを目標にするオルタナティブスクールが続々と増えており、公教育に疑問をもつ保護者の関心が集まってきています。
オルタナティブ教育は既存の教育に変わり、独自の理念や教育方針に基づく新しい教育です。
文部科学省が定める学校教育との違い
文部科学省が定めた学校というのは以下の9つで、一般的に「一条校」と呼ばれます。
- 幼稚園
- 小学校
- 中学校
- 義務教育学校
- 高等学校
- 中等教育学校
- 特別支援学校
- 大学
- 高等専門学校
一条校では文部科学省の定めたルールに基づき、目的や学習内容が定められています。
オルタナティブスクールはほとんどが一条校に入らない、いわゆる無認可校であり、一条校と異なる運営制度や進級制度、教科などを設けています。学校教育法のような法的な縛りはないので、既存の学校ではできない新しい取り組みが可能です。
一方で、きのくに子どもの村学園(和歌山県)やシュタイナー学園(神奈川県)などのようにオルタナティブスクールの中でもまれに一条校に含まれる認可校が存在します。



私の子供が通っているシュタイナー学校はNPO法人として運営していて、保護者と教師が一体となり運営に取り組んでいます。
フリースクールとの違い
オルタナティブスクールもフリースクールも無認可の学校というところは同じです。厳密な定義はありませんが、一般的に以下のように分類されます。
オルタナティブスクール | フリースクール |
---|---|
独自の教育や運営方針に共感し、学びたい子供が集まってくる学校 | 不登校や引きこもりなどで学校に行きたくても行けない子が通う学校 |
オルタナティブスクールは前向きな選択肢として通わせる学校であり、フリースクールはやや後ろ向きな選択肢として通わせる学校といえます。
オルタナティブ教育の種類


代表的なオルタナティブ教育として以下の7種類を紹介します。
- モンテッソーリ教育
- シュタイナー教育
- イエナプラン教育
- レッジョ・エミリア教育
- ドルトンプラン教育
- サドベリー教育
- フレネ教育
1つずつ解説していきます。
モンテッソーリ教育
モンテッソーリ教育は1907年にイタリアの医師である、マリア・モンテッソーリが提唱した教育法です。
子供は、自分自身を成長させる「自己教育力」を生まれながらに持つと考え、保育者や教師は自発的な子供の活動をサポートするのが仕事です。教室には成長段階に合う環境や教具を整え、子供にはそのとき興味のあることを満足のいくまで取り組ませます。
教育の目的は「自立し、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てること」としています。
<学校の一例>
- 東京モンテッソーリスクール(東京都 小学校~中学校)
- マリア・モンテッソーリ・エレメンタリースクール(神奈川県 小学校)



モンテッソーリ教育は幼稚園以下で取り入れているところが多く、小学校以上はまだ少ない状況です。
シュタイナー教育
シュタイナー教育はドイツで活躍したルドルフシュタイナーの考えに基づく教育法です。
0~7歳は体の成長、7~14歳は心の成長、14~21歳は思考の成長、と子供の成長を3段階に分け各成長段階に合わせた学びを提供しています。自然素材を大切にし、芸術や音楽を取り入れた教育が特徴的です。
小学校以上ではエポック授業といって、午前中に100分間、数週間にわたり同じ科目を毎日連続して学ぶ授業方式が取り入れられています。



低学年のうちはクレヨンでノートを書き、手仕事という時間では毛糸で編み物の作品を作成しています。家に持って帰ってくる作品がかわいらしいです♪
<学校の一例>
- 学校法人シュタイナー学園(神奈川県 小学校~高校)
- 東京賢治シュタイナー学校(東京都 小学校~高校)
イエナプラン教育
イエナプラン教育は、ドイツにあるイエナ大学のペーター・ペーターゼンによって提唱された教育で、オランダではメジャーな教育です。
教室は異年齢の子供たちが一緒に学び助け合いながら成長できるように環境が整えられています。さらに、毎日の授業で人間の活動に欠かせない「会話・学び・仕事・催し」の4つの基本活動がリズムよく循環するよう企画されているのが特徴です。
学校は社会であり、子供たちはその社会の一員としてそれぞれの自主性を尊重したりコミュニケーションの促進を重視する教育です。
<学校の一例>
- 大日向小学校・中学校(長野県 小学校~中学校)
- 湘南ホクレア学園(神奈川県 小学校~中学校 )
レッジョ・エミリア教育
レッジョ・エミリア教育はイタリアのレッジョ・エミリア市で考案された教育です。
提唱者であるローリス・マラグッツィ氏の「子供が100人いれば100通り、無限の可能性がある」という言葉が教育理念の象徴です。子供の可能性を損なわないために、子供の取り組みを急かさず、否定せず、といった自主性を大切にした教育を実践しています。
特徴的な活動はプロジェクト(長時間の探究活動)や保育ドキュメンテーション(活動を記録に残す)などです。プロジェクトを推進するためにアート活動にも力を入れています。
レッジョエミリア教育で重要視しているのは、子供が自分たちで考えて行動することです。
<学校の一例>
- MIRAI English Garden(東京都 埼玉県他 幼稚園)
- 北見幼稚園(北海道 幼稚園)
ドルトンプラン教育
ドルトンプラン教育は1908年にアメリカのヘレン・パーカースト女史が提案した教育方法です。アメリカで当時主流だった詰め込み型の教育への問題意識から生まれた、学習者中心の教育と言われています。
ドルトンプラン教育には「自由」と「協働」という2つの原理があるのが特徴です。「自由」は創造性や自分で考えて行動するための思考力を身につけること、「協働」は社会性や協調性をはぐくむことを表します。
異年齢の子供たちが集まる環境で、教師が1人1人の能力に合わせた学習計画を立て、個別に指導していく方法で行っています。
<学校の一例>
- ドルトン東京学園中等部・高等部(東京都 中学校~高校)
- The Dalton School(東京都 愛知県 1歳~小学校)
サドベリー教育
サドベリー教育とは、1968年にアメリカで創設されたサドベリー・バレー・スクールで生まれた教育理念に基づく教育です。
サドベリー教育では子供たちが自分の興味関心に沿って行動できるよう、決まったカリキュラムはありません。時間割やテストもありません。
いつ、どこで、何を学ぶかは子供たち自身が決めることができます。スタッフといわれる大人のサポートのもと学校運営にも携わります。
サドベリー教育は好きなことをしながら成長することを重視した教育です。
<学校の一例>
- 東京サドベリースクール(東京都 5~18歳)
- 湘南サドベリースクール(神奈川県 4~18歳)
フレネ教育
フレネ教育とは、南フランスの教師、セレスタン・フレネが生み出した教育法です。
フレネ教育は、子供たちが日々の生活の中で感じた興味や関心を学びに繋げていく教育であるため、一斉学習ではありません。具体的には、自分の感じたことを書いて発表する自由作文や、良かった自由作文を印刷してみんなの教科書とする活動などがあります。
フレネ教育では個人の成長や学びを個人の世界でとどめず、他者とのかかわりや共同体の中でより豊かにする教育です。
<学校の一例>
わが子に合ったオルタナティブ教育の選び方


オルタナティブ教育は種類によって教育方針や学習スタイルが全く違います。不安を取り除くためにも情報収集が必須です。
最近はインターネットや雑誌などでもオルタナティブ教育についてさまざまな情報を得ることができます。各教育法の中からわが子に受けさせたいと感じるものを調べてみましょう。
関心のある教育が決まったら、近くのオルタナティブスクールを見つけ、説明会や体験会に積極的に参加してみてください。いざ通わせようと思うと、以下のように気になることが多く出てくると思います。
- 子供の学びの様子
- 学びの環境
- 子供の進路
- 費用
- 入園入学のための条件
- 親の役割
現場の先生や実際の保護者の意見を集めることが疑問を解決する近道です。
子供に合ったオルタナティブ教育を選択するために、まずは情報収集を徹底して不安を取り除きましょう。



私の場合はシュタイナー教育の幼稚園をまず選びました。子供が在園中に卒園後に通えるシュタイナー小学校を一通り見学に行きました。
オルタナティブ教育のメリット


オルタナティブ教育のメリットとして以下の4点があげられます。
- 少人数クラスできめ細かく指導ができる
- 学習指導要領に縛られない教育ができる
- 体験型学習が豊富である
- 公教育になじめない子たちの受け皿となる
それぞれ詳しく解説します。
少人数クラスできめ細かく指導ができる
オルタナティブスクールは少人数の学校が多いので、教員がきめ細かく指導することができます。
大人数の中では自分の意志を主張しにくい子にとっても良い環境といえます。



私は過去40人のクラス担任をしていましたが、業務量も多い中で一人ひとりを細かくみるのは正直不可能です。どうしても手がかかる子に時間を割かざるを得ませんでした。
学習指導要領に縛られない教育ができる
一条校では学習指導要領に基づくカリキュラムが決められています。
一方、オルタナティブスクールは自由にカリキュラムを作ることができるので、一条校ではできない活動ができたり、必要のない活動は減らしたり、柔軟な対応ができます。
体験型学習が豊富である
オルタナティブ教育では子供たちの興味関心に基づく体験活動が多く行われるところが多いです。
たとえば、子供たち自身が企画・実行するプロジェクト型学習や農業体験のような自然体験活動、音楽・美術を取り入れた表現活動など、学校によってさまざまな取り組みがなされています。
公教育になじめない子たちの受け皿となる
オルタナティブスクールは公立の学校のような一斉授業形式が苦手な子供にとって、受け皿となる可能性があります。
公教育になじめない子供にとって、少人数指導や対話型の授業を実施しているオルタナティブスクールのほうが生活がしやすい場合があります。
オルタナティブ教育のデメリット


オルタナティブ教育のデメリットとして以下の4点があげられます。
- お金がかかる
- 学校の数が少ない
- 認可校が少なく欠席扱いになる場合がある
- 高校まである学校が少ない
それぞれ詳しく解説します。
お金がかかる
公立の学校は授業料が無償化のためお金はかかりませんが、オルタナティブスクールでは学費がかかります。
私立の学校程度、またはそれ以上の費用がかかることを想定しておきましょう。



我が家の場合は、小学1年生から高校3年生まで12年間通う予定でオルタナティブスクールを選びました。学費はかかるものの、中学受験や高校受験のための費用はかからないと見込んでいます。
とはいえ、子育てをしていると突発的な出費はいつでも考えられます。余裕をもった資金計画で入学を検討しましょう。
学校の数が少ない
日本国内にオルタナティブスクールは400~500か所あるといわれていますが、フリースクールやインターナショナルスクールを含む推計値であり、明確なデータはありません。
各地で徐々に増えてきてはいますが、まだまだ数が少なく、近くに通える学校がない場合も多いです。
認可校が少なく欠席扱いになる場合が多い
オルタナティブスクールは学校法人として運営している認可校はほんの一部です。そこで、住まいに近い公立校に学籍を置き、欠席扱いとして通う方法をとることが一般的です。
私の子供の学校もNPO法人として運営しているため、近隣の公立小学校に籍をおき、欠席扱いとされています。



私の子供の場合は、すんなりと学籍をおかせていただきました。しかし、まれに学籍をおかせてもらいにくい公立校もあるようです。
高校まである学校が少ない
オルタナティブスクールは小中学校までの教育を提供しているところがほとんどで、高校まで併設している学校はまだ少ないです。
高校に進学するときに一条校に進学する場合、ほかの子供たちとのギャップを感じてしまうかもしれません。
オルタナティブスクールの選択をするときに、卒業後の進路についても確認しておくとよいでしょう。



私は学校を選ぶとき卒業後の進路が一番気になるところでした。しかし、卒業生の様子を見たり、具体的な進路を尋ねたりし決意が固まりました。
まとめ


私の実体験を交えながらオルタナティブ教育の特徴や選び方、メリット、デメリットについて解説しました。
保護者のみなさんの多くは、自分自身が幼いころ公教育を通じて学んできたため、オルタナティブ教育のような一見特異にみえるものに、あこがれと同時に抵抗があるかもしれません。
しかし、伝統や当たり前にとらわれず、オルタナティブ教育についても関心を広げてみると、子供の教育や子供との接し方へのヒントが得られると思います。
いきなり入学させるのにはハードルがある場合は、一般向けに開催しているオルタナティブ教育の講座のようなものを探し、参加してみるのもおすすめです。私もオルタナティブ教育を本格的に考えたのは、近所のシュタイナー教育の絵画教室に参加したことがきっかけでした。
オルタナティブ教育の理念に共感している方だけでなく、今の公教育に疑問を持っている方や子供が学校に行きたがらないことに不安を感じている方は、一度オルタナティブ教育を検討してみてはいかがでしょうか。
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